“終活”と聞きますと、「死に支度」、「縁起でもない」という風にとらえる方もおられるかもしれません。
一方で、最近では「どの様なことをすればいいのか」というご質問をいただくことが増えている様にも思います。
終活に明確な定義はありませんので、人によっても異なるものだと思いますが、将来に対する考えや不安点を整理し、ご自身やご家族のこれからを想像することで、「今を生きることを見つめ直そうとする活動」ということが言えると思います。
私が「どの様な終活をすればいいのか」というご相談を受けた時には、次の様なことをお伺いしています。
“もし、今自分が亡くなったら?”について、想像してみて下さい。
ご自身が心配していること、ご家族や周りの方が困る様なこと、争いの原因になってしまう様なことは、ないでしょうか?
少しでも思い浮かぶ様なことがあれば、「それをなくす、又は改善するには?」ということを考えて、具体的な行動に移すということが、その方にとっての終活になるのではないかと思います。
実際に終活をされた方の話をお伺い致しますと、「気持ちがすっきりとした」、「前向きになった」、「新たな目標を定めた」など、前向きなお気持ちになったと仰る方の方が、比較的多い様に思われます。
その様に感じられるのは、漠然とした不安の様なものを自分なりに整理することで、「これまでよりも、今が充実したものに感じられる」ということなのかもしれません。
・・など、
子供がおられない、「おひとりさま」「おふたりさま」と呼ばれる方々の場合、認知症や病気などの原因により、ご自身で日常生活を送ることが難しくなってきたら?入院や施設などへの入所の際に「身元引受け人」となる方を求められたら?、最終の費用支払い等はどうする?などの懸念があります。
身近に頼れる親族の方がおられない、又は遠方にお住いという場合、第三者にお願いすることにもなりますが、いざ必要となってからでは間に合わない場合もあります。
まず、遺言の作成を思い浮かべる方もおられると思いますが、遺言は死後の財産の引継ぎ方法などを指定することは出来ても、葬儀や埋葬などの亡くなった後のことに起こることにつきましては、それを指定することに法的な根拠がありません。
また、ご自身の死後のことを記すのが遺言ですので、認知症などで判断能力が低下してしまった後の、日常生活に関する備えとしては、適切ではありません。
そんな時の備えとしては、「見守り契約」や「任意後見契約」などで、後見人や身元引受け人をお任せし、ご自身の亡くなった後の様々な手続きについて、「死後事務委任契約」を締結することで、遺言では手が届かない部分の手当てをすることが可能となります。
「遺言」「任意後見契約」「死後事務委任契約」は、頼れる親族がおられない方にとっては、特に必要となることから、おひとりさま3点セット(あるいは「家族信託」を含めて4点セット)などと呼ばれております。
エンディングノートは、ご自身の人生を振り返り、将来に向けてのお考えを整理をする為に用いたり、終末期や亡くなった後における、ご自身の希望などを綴ったりするもので、ご自身なりのお考えをまとめて、忘備録としての役割や具体的なご希望なども、自由に記述することが出来ます。
遺されたご家族に様々な想いを伝えることは出来ますが、その内容については法的な拘束力はありませんので、「亡くなったら○○して欲しい」とか、「財産は△△に遺したい」という事が記載されていても、それはあくまでご本人の希望に過ぎません。
この点について、遺言には法的拘束力がありますので、大きな違いとなります。
どちらもつくられた方の想いが形になったもので、大切な意思表示の手段の一つですが、そのもたらす効果は大きく違います。
「終活」という活動の中のひとつにエンディングノートが存在し、遺言はそれを更に具体化し、法的な効力を持たせるところまで高めたもの、という言い方が出来るのではないでしょうか。
近年、ご自身の葬儀やお墓について、費用や参列される方の規模などを考える時間をつくり、見学会や体験イベントに参加する方、先に葬儀契約をされる方も増えています。
「出来るだけ費用を抑えたい」、「ごく少数で簡素に済ませたい」とお考えになる方が増えてきたという背景もあり、葬儀や埋葬の方式には様々なものがあります。
葬儀や通夜など、儀式そのものを行わず、すぐに火葬を行うもの
多くの参列者に葬儀・告別式に参列してもらわず、ご家族やごく親しい方だけで済ませるもの
告別式と火葬を1日で行うもの
墓標を設けない「樹木葬」や、海洋に散骨を行う「自然葬」とい方式
葬儀という形式を崩し、堅苦しいくないイメージにしたもの
など、
ご自身が入るべき墓地や墓石が無く、それらをどうしようかとお悩みの方も多くおられますし、お持ちの方でも、それを「今後誰が守ってくれるのか」という問題もあります。
今日、「墓じまい」という言葉もよく聞かれますが、これは実家のお墓が遠くてなかなか参ることが出来ない、お墓を参る方そのものがおられない、という現代の生活状況の影響を受けた行動から、生まれた言葉です。
ただ、立派なお墓を建てられても、それを守っていくのは遺された方々ですので、特に核家族化がすすんでいる現代では、これから墓地や墓石にあまり費用を掛けたくない、という方も多くおられます。
ご自身のご希望やお考えははもちろん大切ですが、それをどのように守っていく(守ってもらう)のか、ということまで、併せて考えなければならない時代なっているのかもしれません。
都道府県や市町村など、公共団体が運営している墓地
宗派などの宗教的制約があまりないところが多いですが、人気の地域は抽選になる場合もあり、住所地による申込制限や、お墓の形状に制約があるところもあります。
宗教団体や公益法人などの委託を受けた、民間企業が運営している墓地
購入に際しての制限は少ないところが多いですが、料金は地域や区画によってかなりの幅があり、希望通りの地域や区画が求められない場合もあります。
寺院が管理運営している墓地(檀家専用の場合が多い)
宗派や墓石の購入を制約して、提携先でしか購入できない規定にしているところや、近年話題になっている“墓じまい”におきまして、離壇料を請求するところもあり、それが高額で問題となっている場合もあります。
地域の団体で共同管理している墓地
区画が整理されず、そのまま墓地の敷地が広がったところや、1つの墓石で複数の遺骨が安置されている場合もあります。