遺留分とは、相続人が取得することが認められた最低限の相続割合のことで、財産の引き継ぎが少なかった相続人は、「遺留分を侵害された」として、財産を多く引き継いだ方に遺留分相当の金銭を請求することが出来ます。
遺留分を請求されるという事態になりますと、すでにご家族の関係が良好な状態とは言えませんし、遺留分の額をめぐって新たな争いが始まる場合もあります。
将来の紛争防止の観点からも、遺言の検討で遺留分を考慮することは、とても重要です。
@配偶者のみ
A配偶者と子供
B子供のみ
C配偶者と両親・祖父母
D両親・祖父母のみ
@〜Cの遺留分割合=全体の2分の1
・配偶者と子供2人の場合
Dの遺留分割合=全体の3分の1
・両親のみの場合
なお、兄弟姉妹は法定相続人ですが、遺留分はありません。
もし、亡くなった方が生前贈与をしておられた場合、どのぐらい前の贈与まで遺留分に含められるのか、という問題があります。
民法1044条第1項及び第3項では、次の様に規定しております。
・相続人以外に対する贈与
=相続開始前の1年間
・相続人に対する贈与
=相続開始前の10年間
民法第1044条第1項には次の様にも定めております。
「〜当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものについても、同様とする。」
この「損害を加えることを知って」ということについて、おおよそ次のような見解が判示されております。
「損害を与える目的までは必要とされず、“遺留分を害することを知っていたかどうか”とし、その判断においては、法律上の知識の有無を問わず、客観的に遺留分権利者に損害を加えることになる事実を知っていれば足りる。」
具体的には、贈与財産の全財産に占める割合、贈与の時期や贈与者の年齢、健康状態、将来財産が増加する見込みがあるかどうか、などが総合的に考慮されます。
少なくとも、高齢の方が財産の大部分を贈与した場合ですと、一般的にはその後に財産が増えるとは見込めませんので、「損害を加えることを知って」いた、とみなされる可能性が高くなります。
また、遺留分を主張する(財産をもらう)かどうかは、相続人個人の請求となりますので、何もせずとも一律にもらえるようになる訳ではありません。
次の期間の経過により、遺留分侵害額請求権は消滅します。
「相続が開始及び遺留分があることを知った時より1年」
(または)
「相続開始時より10年」