遺言を自分でつくるには

遺言を自分でつくるには

自筆証書遺言のつくり方

遺言書

自筆証書遺言は、記述内容に制約がありませんので、「どの様に記述すればいいのか分からない」という、声をお伺いすることもありますが、どのようにすればよいのでしょうか。

 

 基本的には、ご自身の想いを記述するのですが、あまりに極端な内容やどちらでもとれるような曖昧な表現をしない、ということは重要です。

 

 例えば、「私の全財産を甥A(配偶者、子がいる状況だとして)に遺贈する」、「長男と次男に2分の1相続させる」という様なものです。

 

財産の引継ぎ内容の記述例

@財産を引き継いでもらう方や、相続財産ごとに条文を設け、誰がどの財産を引き継ぐことになるのかを明確にします。

 

第一条
次の預貯金債権○○をAに相続させる
第二条
次の不動産〇〇をBに相続させる
(または、)
第一条
長男Cに次の財産を相続させる
第二条
長女Dに次の財産を相続させる

 

A財産を遺す方への記述について
・相続人の場合
 〜に相続させると記述

 

・相続人以外の方の場合
 〜に遺贈すると記述

 

B相続人以外の方に引き継いでもらう場合、個人を特定する為に氏名+生年月日に加えて、住所も記しておく
遺言者の甥A(昭和△△年△月△日生、住所:○○市○○町○番地)に遺贈する

 

 外観上、遺言書は紙きれに過ぎないかもしれませんが、万一の時にそれを読まれたご家族さまが、自分たちの事を想って遺してくれたものという、遺言者さまの想いが伝われば、それはご家族の皆様にとって、『優しい遺言書』になるのではないでしょうか。


財産引継ぎ以外の項目について

財産の引継ぐ方やその割合などを記述することが、遺言の基本的な内容ですが、それだけでは不十分です。

 

 スムーズな遺言内容の実現と、相続人同士だけではなく、それ以外の方とのトラブルにならない様、入れておいた方がよい項目があります。

 

過去の遺言書の取り扱いについて

 内容の異なる遺言書が複数発見された場合、どの遺言書が遺言者さまの本当のお気持ちなのか、相続人の方々で解釈に違いが出るおそれがあります。

 

 その様な場合、すべての遺言が無効になる訳ではなく、重複する部分のみ、日付の新しい遺言が有効となりますが、年数の経過によって過去につくられた遺言内容や、遺言をつくられたこと自体、遺言者さまご本人が忘れておられる場合もあります。

 

 一度でも遺言をつくられたことがある方は、万一のことを考えて、すべての遺言内容を改めて記述し直す事をお勧め致します。

「遺言者は過去の遺言を撤回し、次の通り遺言する」

 

予備的遺言(よびてきゆいごん)

 「予備的遺言」とは、遺言書によって財産を引き継がれる方が、万一、遺言者さまより先に亡くなった場合の為の記述です。

 

 この記述が無い場合、その亡くなった方に遺される予定だった財産は、原則として、相続人全員で改めて協議をする必要があります。

「この遺言の効力発生時において、〇〇が死亡していた時は、○○に相続させるとした財産は、△△に相続させる」

 

祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)の指定

 「祭祀承継者」とは、先祖のお墓や位牌を守り、祭事を主宰される方の事ですすが、ただ主宰するだけの方ではなく、墓地や仏壇などのいわゆる「祭祀財産」を使用する権利を持つ方です。

 

 一般的に、ご家族を継ぐ方(長男など)が指定される場合が多いですが、誰がしなければならない、という規定はありませんので、子供がおられない方でも指定できます。

「遺言者の葬儀及び法事一切を含め、祭祀を主宰すべき者として○○を指定する。」

 

遺言執行者の指定

 「遺言執行者」とは、遺言を実現する為に、あらゆる手続きを行う権限を有する方のことです。

 

 ご家族の事を想ってつくられた遺言書であっても、一部の相続人の意向に沿わない様な場合もあります。

 

 民法第1012条第1項は、「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と規定して、その様な場合でも、遺言内容を実現する為の明確な立場を規定しております。

 

 また、相続人の方以外に不動産を引き継がれる場合、遺言執行者を指定していなければ、本来の相続人と遺贈を受ける方との共同で、不動産の名義変更の手続きをする必要がありますので、相続人の方に協力を得られなければ、遺言通りに手続きが出来ないことになりかねません。

「遺言者は、この遺言の執行者として、〇〇を指定する。」

 

付言事項(ふげんじこう)について

 付言とは、遺言者さまが遺されたご家族に対して、感謝のお気持ちやなぜこの様な遺言内容にしたのか、というお気持ちを遺される部分です。

 

こちらに記述された内容は、法的拘束力を持ちませんが、もし、遺言内容に不満を感じておられる相続人の方がおられても、遺言者のお気持ちを知る事で、争いになる事を防止する効果も期待出来ます。