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遺言書の作成をお勧めする意味

 

 遺言書を作成すると聞きますと、「自分にはまだ早いよ」とか、「そもそも、そんなもの書くほど財産は無いよ」、などと思われる方もおられるのではないでしょうか。
 私も実際に、そのようにお伺いすることは結構ありますが、そのお考えとは次のイメージからきている様に思われます。

・遺言---自分にはまだ早い

 ⇒遺書の様な感じ?

 

・相続---そんなに財産は無い
 ⇒お金持ちだけ関係あるもの?

 

 自分には縁遠い、と思っておられても、病気や不慮の事故もありえますので、誰もが自分はいつまで生きられるのか、ということはわかりません。

 

 そして、そのような自分自身で望まない形であっても、大切なご家族とお別れすることになった場合、残されたご家族は、悲しみや亡くなった方の思い出の品々と共に、遺された財産をどのように引き継いでいくかを話し合い、その為の手続きをする必要があります。

 

 遺言書が無い場合の話し合いや手続きは、相続人となる方の数や遺された財産の種類によっても違いますが、遺言書がある場合と比べて、時間と労力は全く違うものになるのが一般的です。

 

 全ての書類に対して相続人さま全員の署名・押印を求められますし、その為の話し合い自体がうまくすすまない場合、相続手続きそのものが出来ない、ということになってしまうからです。

 

もし、下記のような場合はどうされるでしょうか?

 

・一筆の土地や一軒の建物を複数人で相続する場合
・学費や家の援助をしてあげた方がいたら
・ご自身の面倒をずっと看てくれた方がいたら
・今お住まいの家に相続人の方と同居されている場合
・葬儀や埋葬場所にご希望があった場合

 

 どのような場合でも、遺言が無ければ法定分割ということになりますので、法律には「何分の1」という分割割合しか記載してありません。
 その数字だけで、すんなりと誰からも異論なく相続が完了、ということにならないケースは多いものです。

 

 遺産分割の協議は、相続人さま全員での話し合いが必要になりまが、その時に、もし相続人さま同士の意見に違いがあってまとまらなければ、延々と遺産分割の協議だけが続くか、とりあえずそのままにしておこう、などということになってしまう場合もみうけられます。

 

 もしこうなってしまうと、相続財産が動かせないだけで無く、「受けられたはずの相続税の控除が受けられなくなる」、「その後の相続人の死亡により相続が複雑化する」、ということになる場合もあります。 

 

 また、もし亡くなられた方が、生前にご自分の中で決めておられた、あるいはそれを常々口では言っておられていた場合でも、不意の時にそれが形に残っていないと、その思いは時として伝わらない場合があります。
 また最近では、遺言書の中に相続の割合だけでなく、ご家族へ向けた遺言者さまの最後の想いを「付言」という形で遺される方も増えつつあります。

 

 遺言書とは、残されたご家族の為に遺すことが出来る、ご自身の最後の意思表示ですから、単純に手続きで困らないようにというものだけでなく、時には道しるべとなったり、その後の人生のよりどころとなる場合だってあると思います。年齢や財産の多少で遺言書を作成するかどうかを決めるものではないと思うのです。


 

遺言書の種類

 

 遺言書の種類には、大きく分けまして自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言(これらを普通方式の遺言といいます)の3つがあります。
 それぞれの遺言書の特徴は、簡単に述べますと下記の通りとなります。

  • 自筆証書遺言

 自筆証書遺言書の要件は、
 @自書する(印字は不可)
 A日付がある
 B署名・押印がある
 C遺言者が15歳以上で遺言能力がある
の4つが、法律に規定されている要件です。

 

 記入する用紙や、遺言内容には特に規定がありません。
 極端に言えば、メモ帳などに書いてあっても、@〜Cの要件を満たしていて、遺言者さまの真の意思がそこに込められているならば、それは有効な遺言書として認められる場合があります。

 

 ただ、添え手をしてもらって記載された遺言書は、その補助者の意思が入っている可能性がある為、効力が問題となった場合、否定されてしまう可能性が高くなります。

 

 自筆証書遺言書に基づいて相続を行う為には、家庭裁判所の「検認」という作業が必要となり、これは原則、相続人さま全員の立ち合いが必要となります。

 

 また、「どのようにして保管するか」、「ご家族にどのようにして見てもらうか」、という点が問題となります。
 遺言書を作成されてから、それをご家族が目にするまでの期間は長い期間になる場合もあります。その為、行方がわからなくなったり、破れてしまっていたり、書き加えられてしまっている、などの恐れもあり、最悪の場合は、相続人の方に発見されない場合もありえます。

  • 秘密証書遺言

 遺言書の作成・内容自体を秘密とすることができる遺言です。遺言者が遺言内容を作成しますが、自筆証書遺言のように自書である必要は無く、第三者に作成してもらっても構いません。

 

 ただ、こちらも家庭裁判所の検認は必要となりますので、その後の利害関係者の訴えにより、遺言書の効力自体が否定される可能性はあります。

  • 公正証書遺言

 遺言書の原案を遺言者が作成し、それを公証人と呼ばれる方が公正証書遺言にするものです。証人を2名必要とされる点、他の遺言書に比べて費用がかかる点が欠点ですが、家庭裁判所の検認は不要ですので、遺言書の効力を争われる可能性が一番少ないです。

 

 また、滅失、毀損、偽造、変造の恐れがほぼ無く、法律上の保存期間は20年間(一般的には遺言者さまが100歳となるまで)となります。

 

 

 

特に遺言書の作成をお勧めする方とは

 

 次のような場合は、遺言書が無いと相続が出来ない、または相続が円滑にすすみませんので、遺言書の作成を特にお勧めします。

 

  • 「法定相続」とは異なる配分で、相続させたいとき

 推定相続人の方の生活状態や、遺言者さまの思いで配分を変えたいと思われる場合は、遺言書でその意思を遺しておく必要があります。

  • 推定相続人が、配偶者と兄弟姉妹のとき

 配偶者にとりますと、亡くなられた方の兄弟姉妹というのは、義理の関係にあたります。普段からのお付き合いがあまり無い場合や、関係が良好ではない場合、遺産分割の話し合いといういうのは円滑に進まない場合があります。
 場合によってはあまり話をしたくない、という方もおられるのではないでしょうか。
 また、子供がいない夫婦は、すべて配偶者が相続できる、と勘違いしている方がおられますが、そうではありませんので、どのようにすれば一番皆様が安心できるか、よくご検討された方が安心です。

  • 推定相続人以外の方へ相続させたいとき

 この場合は遺言書が無いとできません。
 おもに次の様な方への相続の場合です。
@子供の配偶者
 息子のお嫁さんにはとても世話になった、など。
A内縁の配偶者
 婚姻届は提出していないけど、長い間一緒に過ごしてきた、など。
B相続権が無い推定相続人
 お孫さんや世話になった兄弟姉妹、など。
C看病してくれた方やお世話になった方
 入院していた病院の先生や看護師さん、お世話になったご友人、など。
D公共団体などへの寄付
 ご自身のお住まいの市町村や、特定の団体、など。

  • その他、遺言書があった方がよいと思われるケース

@再婚された方で、前の配偶者との間に子供がいる場合
 前の配偶者の子供には相続権がありますので、再婚された方との関係によっては、紛争やもめ事の原因になる場合があります。
Aお一人で生活をされている未婚の方
 ご自身の思いを遺された方が、相続人の方が困られるようなことが防止できます。
B婚姻関係でない方との間に子供がおられる方
 相続分は配偶者との間の子供と同じですが、遺言書で遺していない場合、その後に紛争やもめ事の原因のひとつになる場合があります。
C推定相続人の中に行方不明者がいる場合
 失踪宣告がなされてるか、など明確にしておいた方がよいと思われます。

 

 

遺言書の作成は公正証書遺言がおすすめです

 

 公正証書遺言は、公証人への手数料が必要な点、相続人以外で証人が2人必要な点が欠点ですが、それでも公正証書遺言をお勧めする理由は大きく2つあります。 

 

1、紛争の可能性の少ない遺言書が作成できる。

 

 自筆証書遺言はご自身のみで作成出来る為、費用も安価で済みますが、何が一番問題になりやすいかと申しますと、その遺言書の自筆の真偽と作成時の意思能力の有無についてです。

 

 つまり、この遺言書は本当に遺言者さまが自筆したのか、また自筆だとしても、遺言者にその当時意思能力があったのか、という点です。自筆証書遺言書は遺言者の死後に発見、開封されることが通常ですので、その当時の遺言者がどういう状態だったか,争われる可能性があります。  

 

 公正証書遺言は、遺言者が原案を公証役場で公証人へ提出し、遺言書自体は公証人が作成しますので、遺言者の自筆の有無は始めから問題ありませんし、遺言者さまの原案を公証人が確認をしながら遺言書が作成されますので、その時点で遺言者さまに意思能力があったことは明らかです。

 

2、家庭裁判所の検認が不要で、相続人の立ち合いも不要。

 

 検認とは、遺言書が有効か無効かの判断をするものではなく、遺言書の内容を事実確認をして改ざんがなされないように、現状の保全するという意味合いになります。

 

 法律の規定によりますと、遺言者さまの死後、遺言書の保管者またはこれを発見した相続人は、家庭裁判所に検認の請求をしなければならない、と規定されています。 

 

 家庭裁判所による検認自体は相続人に欠席者がいても行わるようですが、万一欠席された方からしますと、複雑な思いにかれれてしまう場合もあるのではないでしょうか。

 

 公正証書遺言は家庭裁判所の検認は不要ですので、相続人全員の立ち合いは必要ではありません。

 

遺言書を作成する理由は、遺されたご家族が揉める事無く、以後も円満にお付き合いができるように、遺言者さまが思いを遺すものですので、その目的を一番確実にかなえてくれるのが、公正証書遺言なのです。

 

 

 
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